「転職」ではなく「開業」する。医師が押さえておきたい開業スケジュールごとのポイント

医師が開業を決めたら、どのようなスケジュールで開業準備を進めればよいのでしょうか。開業準備に必要な期間は、トータルで約1年~2年。押さえておきたいスケジュールと、それぞれのポイントを解説していきます。

今回はテナント物件での開業準備期間を目安としたお話となります。戸建てでのご開業を検討されている場合は、もう少し長い準備期間が必要となる点を念頭に置いて、読み進めていただければと思います。

【12ヶ月前までに】経営コンセプトの構築、事業計画の策定

はじめにするべきことは、診療方針を含む「経営コンセプト」の決定です。

●どうして開業したいのか

●どのような医療サービスを提供したいか(一般外来、健康診断、予防接種など)

●どんな患者さまをターゲットにするのか(ファミリー層、若年層、高齢者など)

といったところを、地域のニーズやご自身の専門分野などを考慮しながら決めていきます。

一番のポイントは、「何を削るか」です。どうしても「あれも、これも」となりがちですが、限られたリソースのなかでよりよいクリニックにするためには、範囲を限定していく必要があります。

経営コンセプトが決まれば、開業資金の見積もり、資金繰り表の策定、開業までのスケジュールなどを加えて、事業計画書を作成します。事業計画書は安定した経営を続けるためにも大切なものなので、じっくりと時間をかけて練っていきましょう。

【8ヶ月までに】 開業地の決定、資金調達

開業地の決定はかなり重要なポイントなので、経営コンセプトの考案と同時並行で進めるとよいでしょう。そして、遅くとも8カ月前までには決定、契約……と進めていきたいところです。

開業地の決定は、エリア、物件の順に絞っていきます。ポイントは、専門家の意見を聞くことに加え、自分の足を使って現地調査をすることです。

●エリアの選定

人口や年齢層、交通の利便性、競合クリニックの有無、駅や商業施設といった周辺の環境を調べて決定していきます。

・都市部

固定費が高く、クリニックが飽和状態であるため新規参入が難しいエリアです。人口が多いので、高い専門性や差別化ができれば、大きな成功を収めることができます。

・郊外

建物をイチから用意する場合が多く、初期費用が高くつきます。競合クリニックが少なく、集客しやすい点がメリットです。

●物件の選定

・戸建て

初期費用がかかりますが、自由度が高くなります。

・ビルテナント

人通りが多い地域など、条件に合う物件を見つけやすいです。

排水設備が整っていない場合や、耐荷重や搬入口で医療機器に制限がでる場合もあります。

・医療モール

認知されやすく、集客しやすいのがよいところ。

物件が決まれば、資金調達をします。

融資は以下の場所から受けることが多くなりますが、他にも選択肢がございます。

グループ会社に開業支援の部門を持っている弊社では、幅広いアドバイスが可能です。お悩みの際は、是非弊社キャリアアドバイザーへのご相談もご検討ください。

●民間の金融機関

比較的地方銀行の方が低金利で、審査にも通りやすい傾向があります。

●医師会

医師会への加入が条件です。上限額や融資期間、担保の要否は医師会ごとに異なります。

●リース会社

審査が早い一方、金融機関よりも高金利の傾向があります。

【4ヶ月前までに】内装工事開始、医療機器の決定

内装工事の際に注意すべきポイントは、

●従業員や患者さまの動線

●医療機器の設置個所

●経営コンセプトや患者さまの層に合わせたデザイン

コストや相性を見るために、複数の設計事務所や施工会社に相談し、見積もりを取りましょう。

また、医療機関の内装工事には法的な規制もあるので、医療施設の設計実績がある業者を選んだ方が安心です。

医療機器は、購入のほかリースも選択肢のひとつです。

必要な医療機器をリストアップして、以下のポイントを押さえてバランスを見ながら選びましょう。

●コスト

●機能

●操作性

●アフターフォローの充実度

電子カルテや予約システムの導入についても、このタイミングで検討することをおすすめします。

【3ヶ月前までに】スタッフの募集と選考、広告物の作成

クリニックの運営には、看護師、看護助手、医療事務、受付などといったスタッフの力も借りなくてはなりません。ホームページや新聞の折り込み、人材募集サイトなどで募集をかけましょう。

●患者さまに与える第一印象がよい方

●クリニックの経営コンセプトにマッチしている方

●十分な業務能力がある方

●コミュニケーション能力がある方

などを基準に選考していきましょう。

賃金が低すぎると優秀な人材が集まりにくいので、相場を参考にして適切な給与を設定することも大切です。

クリニック開業のPRをして集客をするためには、広告戦略についても考えていかなくてはなりません。広告物には以下のようなものがあります。

●HPの開設

●パンフレットの制作

●新聞折り込みチラシ

●ポスティングチラシ

●内覧会

●SNS

さまざまな表現規制もあるので、医療機関の制作物を取り扱ったことのあるデザイン会社や印刷会社に依頼するのがポイントです。

【1ヶ月前までに】スタッフの研修、届出手続き

いよいよ開院目前。

このあたりでスタッフの研修をスタートしましょう。

スタッフを事前に集め、クリニックの経営コンセプトやマニュアルなどを共有し、医療機器や電子カルテなどの使い方についてもレクチャーします。

積極的にコミュニケーションを取り、開業前に医師とスタッフ、またスタッフ同士の交流を深めておくのも、クリニックの雰囲気アップにつながるポイントです。

同時に、さまざまな届け出手続きも済ませましょう。

●税務署に「開業届」

事業開始後1カ月以内までOKです。

●保健所に「診療所開設届」

開設後10日以内までOKですが、開業と同時に保険診療を行う場合は開業月の前月10日頃を目安に届け出が必要です。この届け出が受理されないと、次の厚生局への「保険医療機関指定申請」の申請ができない上に、不受理の場合もあるので、早い段階から手続きを進めた方が安心です。

●厚生局に「保険医療機関指定申請」

こちらも開業月の前月10日頃を目安に届け出を行ってください。指定日は地域によって異なるので、書類の提出期限を事前に確認しておきましょう。

申請時には常勤先を退職している必要があるのでご注意ください。

まとめ

・クリニックの開業には約1~2年の準備期間が必要です。

・12ヶ月前までに「経営コンセプトの構築」「事業計画の策定」、8ヶ月までに「開業地の決定」「資金調達」、4ヶ月前までに「内装工事開始」「医療機器の決定」、3ヶ月前までに「スタッフの募集と選考」「広告物の作成」、1ヶ月前までに「スタッフの研修」「届出手続き」をしましょう。

※戸建てで開業をご検討される場合は、開業準備期間が長くなりますのでご注意ください。

まとめ


開業準備には、多くの時間と労力がかかります。すべてをひとりで行なうのは大変なので、プロのアドバイスを取り入れてスムーズに進めることが大切です。

クリニックの開業に関するさまざまな情報を持つ「キャディカル医師.転職」のキャリアアドバイザーが、あなたの開業をサポートします。

お困りのことがありましたら弊社お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください!

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