医師は言わずと知れたハードな職業です。長時間労働や職場の人間関係に疲弊したり、ときには患者さまからのクレームが原因で心身に不調を来したりすることも。また、給与等の待遇面への不満、やる気があるのにキャリアアップが見込めない体制など、さまざまな理由で転職に踏み切る医師がいます。
転職を決めたら、まずは今の職場を円満に退職できるように準備しましょう。スムーズな転職は円満退職があって初めて成り立ちます。さらに必要な手続き、退職挨拶についてもご案内します。
目次
退職を決めたら最初にやること
転職をするなら円満退職するに越したことはありません。医療業界は意外と狭く、噂がたちまち広まることも珍しくないからです。将来のキャリアに傷がつかないように円満退職を成功させましょう。
現職を続けながら転職活動を並行し、めでたく内定が決まったと仮定します。ここで非常に大切になるのが、退職の意思を上司に伝えるタイミングです。内定が出た勢いで慌てて上司に伝えたり、先に同僚に漏らして噂が上司の耳に入るような事態は避けなければなりません。
理想は、転職活動中からの根回しです。先に退職した先輩医師にどのような段取りで、いつ退職の意思表示をしたか相談をし、アドバイスをもらえると安心ですね。目的は、現在の職場からの慰留を防ぐためです。上司から「人手不足なのに退職されては現場が回らない」「後任が決まるまで残ってほしい」などと引き留められるとも限りません。また、繁忙期や人事異動の前後、職員の休みが増える年末年始なども避けるほうがよいでしょう。
こうした事情をふまえ、転職活動は数か月から場合によっては1年くらいかけて、退職の意思を伝えるベストなタイミングを見きわめてください。
退職までの流れと必要な手続き
退職の意思を伝えるタイミングが決まったら、一般的には次のような流れをとります。
1)退職の意思表示
必ず一番初めに直属の上司に退職の意思を伝えます。当然、理由を尋ねられますので前もって準備しておきます。実際の理由が何らかの不満等であっても、感情的にぶつけてしまってはトラブルの元に。あわせて退職届の提出の要・不要や規定の書式があるかも確認します。
先ほど、上司より前に同僚に話すのはNGと述べました。退職の噂が不本意な形で独り歩きし、上司や周囲に軽率な印象を与えてしまいますので注意が必要です。
2)退職日を決定する
上司や人事担当者と相談し、双方になるべく影響が出ない日を選びます。また、仕事を引継いでくれる人材の確保が必要です。上司とよく打ち合わせをしてください。
3)引継ぎ
後任の医師が決まったら、業務や担当する患者さまの引継ぎを行います。 後任の医師は通常業務にあなたからの引継ぎという別業務が加わるため、特に忙しくなります。退職日までに間に合うよう逆算してスケジュールを立てる、あなたがいなくなっても困らないようにわかりやすい書面やファイルを残す、過去の患者さまからクレームを受けたりトラブルが発生したりした場合、その記録を共有するなどの配慮が必要です。きちんとした引継ぎは患者さまへのよい医療の提供にもつながります。
職員と患者さまへの挨拶
最終出勤日は時間も気持ちも余裕が持てず、勤務シフトによっては顔を合わせない人もいます。挨拶が間に合わずに退職してしまうと、人間関係によけいなしこりを残してしまいますから、周囲への挨拶は数日に分けて行うのがよいでしょう。お世話になった人のリストを作り、漏れがないようにしましょう。メールや電話を利用する手もありますが、やはり顔を合わせて直接伝えることが望ましいです。
患者さまへの挨拶は、職場の規定を確認し、可能であれば先に退職した医師の経験を参考にします。職員への挨拶と異なり、患者さまは担当の医師が辞めると聞くと不安を抱きます。患者さまも後任の医師も安心できるように気遣ってください。
最終出勤日の手続き
勤務先から貸与されたものをすべて返却し、反対に受け取るものは受け取ってから職場を去ります。
■退職時の返却リスト
・健康保険被健康保険者証
・身分証明書類(社員証、IDカード)
・名刺、名札
・制服(貸与されていた場合のみ。クリーニングをかけて返却するとよいでしょう)
・ロッカーやデスクの鍵
・通信機器(携帯電話、PHS、パソコン、タブレット)
・書籍、文具等の備品、データ等
■退職時の受け取りリスト
・離職票:転職先が決まっていない場合、失業手当給付の手続きに必要となるものです。通常は退職日より10日前後に交付、郵送されるケースが多いようです。転職先が決まっている場合は不要です。
・雇用保険被保険者証
・源泉徴収票 ・年金手帳(勤務先が保管していた場合)
円満退職を実現するポイント
トラブルを避ける
円満退職を実現するには、退職に伴うトラブルを回避することが大切です。
繰り返しになりますが、退職の意思表示のタイミングが重要です。病院側が医師を解雇する場合、労働基準法では30日前に予告することが義務付けられています。一方、医師の方が辞めたい場合は同法の627条2項により、退職を申し入れてから2週間経つと退職できるとされています。
しかし医師の仕事は人の命や健康の維持に関わっているため、たとえ法的に問題がないといっても退職の意思表示後2週間で辞めるのは難しいと言えるでしょう。
医局に所属する医師なら少なくとも1年、できれば2年前から退職の計画を慎重に立てるのがおすすめです。医局に所属しない医師であれば、少なくとも3か月前、余裕をもって半年前には次の勤務先を決めて、退職へ動くとよいと思います。
いずれの場合も、病院によって退職の意思表示をする期日が決まっていると思うので、前もって確認をしておくようにしましょう。
退職理由はよく考えて
待遇や条件、人間関係など、何らかの不満が退職の理由であってもそれをストレートに伝えるのは考えものです。なぜなら、上司や人事担当者に「改善の余地があるのに努力することなく他に逃げるのでは」という印象を与え、慰留を求められる可能性が生じるからです。重要なのは「退職を受け入れるより仕方ない」と思わせること。例として、キャリアアップをめざすためといった前向きな理由、実家や家庭の都合、転科や開業のためであれば波風を立てにくいといえるでしょう。
転職エージェントを活用する
日々の業務に励みながら転職活動をするのは楽ではありません。本コラムで紹介したような円満退職までの流れは、頭ではわかっていても実行に移すとなると失敗してしまうこともあります。
そこで、「1人で頑張らない転職」をご提案します。転職エージェント会社を頼ることで、働きながら転職先をリサーチし、退職と転職のタイミングも理想に近づけることが可能になります。
「キャディカル医師.転職」はキャリアアドバイザーがあなたの退職や転職に対する不安や希望を丁寧にヒアリングし、サポートいたします。ぜひ一度、ご相談ください。
まとめ
・医師の世界は狭く、噂が広がりやすい傾向があります。円満な退職をめざしましょう。
・医師の退職はタイミングが非常に大切です。引き止められる可能性を下げ、スムーズな引き継ぎを行うために早い段階から準備を始めましょう。
・ネガティブな退職理由をそのまま伝えるのはトラブルの元。前向きな理由、退職を受け入れざるを得ない理由をあらかじめ用意しておきます。
・激務を続けながら転職活動をするのが難しい場合、転職のプロにサポートしてもらうと良いでしょう。
転職の成功は円満な退職の上に成り立ちます。退職の意思表示のタイミングを間違えないようにゆとりをもって準備しましょう。また、お世話になった方々に挨拶をし、後任の医師に丁寧に引継ぎを行うことで患者さまの不安も軽減できます。
転職活動が不慣れである、あるいは働きながら探すゆとりがないという人は、転職サポートのプロである「キャディカル医師.転職」に相談することをおすすめします。お困りのことがありましたら弊社お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください!